「別のパソコンなのに、なんで前に作った作品があるの?」

わが家の6歳が、Scratch(スクラッチ)を別のパソコンで開いたとき、こう不思議がりました。「アカウントが同じだからだよ」と答えると、今度は「アカウントって何?」。いざ説明しようとすると、大人でも意外とむずかしい言葉です。

この記事では、アカウントとは何か、そして作った作品はどこにあるのかを、やさしく説明します。わが家の6歳が「なるほど、〇〇と同じだ」と腑に落ちた言い方も紹介するので、お子さんへの説明にも使ってみてください。

※「アカウント」「サーバー」などの言葉は、記事の中でひとつずつ、身近な例えにしながら説明します。むずかしい用語を覚える必要はありません。


きっかけ:「別のパソコンなのに、なんで作品があるの?」

子どもは最初、「自分が作った作品は、その作ったパソコンの中に入っている」と思っていました。だから、別のパソコンで開いたのに同じ作品が出てきたことが、とても不思議だったのです。

実はこれ、とても良い疑問です。「作品(データ)は、いったいどこにあるのか?」——ここがわかると、アカウントのしくみもすっきり理解できます。順番に見ていきましょう。


アカウントってなに?──「これは自分です」と伝える名札

アカウントとは、ひとことで言うと「『これは自分ですよ』とサービスに伝えるための“名札(なふだ)”」です。本人を見分けるためのしくみ、と言ってもよいでしょう。

ここで大事なのは、作品そのものはアカウントの中に入っているわけではないということ。作品は別の場所(次の章で説明する「サーバー」)にしまわれていて、アカウント(名札)を見せると、その人の作品を取り出せるようになります。

  • 自分の名前(ユーザー名)=名札。「これは自分です」とサービスに伝える
  • 名札を見せると、サービスが「あなたの作品はこれですね」と取り出してくれる
  • だから、どのパソコンからでも、同じ名札(と、次に出てくるカギ)を見せれば、自分の作品を取り出せる

「別のパソコンなのに作品があった」のは、パソコンが覚えていたからではなく、名札(アカウント)で『自分のもの』だと分かってもらえたからなのです。


作った作品はどこにあるの?──「大きな倉庫」のようなコンピュータ

ここがいちばん大事なところです。

作った作品は、自分のパソコンの中には入っていません。インターネットの向こうにある「たくさんの人の作品や写真を預かってくれる、大きな倉庫のようなコンピュータ」にしまわれています。この倉庫のようなコンピュータを「サーバー」と呼びます。

  • あなたのパソコン=窓口(作ったり、見たりする場所)
  • サーバー=大きな倉庫(作品が実際に預けられている場所・遠くにある)

作品は倉庫(サーバー)にあるので、窓口(パソコン)がどれであっても、名札を見せれば取り出せます。逆に言うと、ログインせずに(名札を持たずに)作った作品は、どこにも預けられていないので、ページを閉じると消えてしまいます。

クラウドってなに?

いま説明した「インターネットの向こうにある、あずかり所(サーバー)」を、まとめて「クラウド」と呼びます。雲(クラウド)の向こうに、作品や写真をしまっておくイメージです。「クラウドに保存する」と聞いたら、「あの大きな倉庫に預けるんだな」と思えば大丈夫です。


6歳に通じた説明:「実家に預けるのと同じ」

わが家では、こう言いかえてみました。

「作品はね、Scratchっていう場所にあずけてあるんだ。自分の名前を教えると返してもらえるんだよ。」

すると6歳が、自分からこう言いました。

「あ、下の子を実家に預けてるのと同じだ」

これにはこちらが驚きました。おじいちゃん・おばあちゃんの家(実家)に弟を預けて、あとで迎えに行く——たしかに、よく似ています。

  • 弟を実家に預ける = 作品を「大きな倉庫(サーバー)」に預ける
  • 自分が迎えに行く(自分の家族だと分かってもらう)= 名札(アカウント)で「自分のもの」だと分かってもらう
  • 弟は自分の家にいるわけじゃない = 作品もこのパソコンの中にいるわけじゃない

子どもが自分の生活の中の出来事に結びつけたとき、すとんと理解が進みました。むずかしい言葉より、その子が知っている身近な例にあてはめるのが、いちばん伝わると改めて感じた瞬間です。


パスワードは「自分だけのカギ」

名前(ユーザー名)だけだと、ほかの人もその名前を知っていれば開けられてしまいます。そこで必要なのが「パスワード」です。

パスワードは、自分の預け場所を開ける「カギ」です。名前(だれの場所か)とカギ(本当に本人か)の2つがそろって、はじめて自分の作品を取り出せます。

  • ユーザー名=どの場所か(みんなに見えてもよい)
  • パスワード=自分だけのカギ(だれにも教えない)

「カギは人に渡さないよね」と話すと、子どもにも大切さが伝わりやすいです。


親子で話しておきたいこと

アカウントのしくみがわかると、インターネットとの付き合い方も少し見えてきます。低学年のうちは、次のことを親子で話しておくと安心です。

  • カギ(パスワード)は人に教えない:自分と、管理する保護者だけが知っているもの
  • 名前(ユーザー名)に本名や個人情報を入れない:預け場所の名前は他の人にも見えることがあります
  • パスワードは保護者が管理する:低学年のうちは、保護者が控えておくと安心です

アカウントは、これからいろいろなサービスを使うときに必ず出てくる考え方です。最初のひとつを「預ける・名前でもらう・カギで守る」とイメージできていると、次からの理解がぐっと楽になります。


まとめ

  • アカウント=「これは自分です」とサービスに伝える“名札”(本人を見分けるしくみ)。名札を見せると自分の作品を取り出せる
  • 作った作品はパソコンの中ではなく、インターネットの向こうの「大きな倉庫(サーバー)=クラウド」にある。だからどのパソコンからでも取り出せる
  • 「実家に預けて、自分が迎えに行く」と同じイメージ。子どもが知っている身近な例にあてはめると伝わりやすい
  • パスワードは「自分だけのカギ」。名前(どの場所か)+カギ(本人か)で自分の作品を守る
  • カギは教えない・名前に個人情報を入れない・カギは保護者が管理、を親子で確認しておくと安心

子どもの「なんで?」は、ITのしくみをやさしく学ぶ入り口です。「アカウント」も、身近な例えにすれば6歳でも理解できました。お子さんに聞かれたとき、この記事を思い出してもらえたらうれしいです。

この記事は、「子どもの疑問から学ぶ ITのしくみ」シリーズの最初の1本です。子どもがぶつかる『なんで?』を、体験が生まれるたびに、ひとつずつやさしく解説していきます。ほかの「なんで?」は、下の関連記事からどうぞ。

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