「あれ? 作った作品が見れない!」

いつものようにScratch(スクラッチ=ブロックでゲームを作る、子ども向けプログラミング)を開いたとき、わが家の6歳がこう言いました。原因はかんたんで、サインインしていなかっただけ。でも、子どもにとっては「作った作品が消えた!?」という大事件です。

これは「サインインってなに?」を説明する、よいきっかけになりました。

この記事では、その中でも「サインイン(ログインとも呼ばれます)」に注目します。サインインとは何かなぜサインインすると自分の作品が見られるのか、そしてパスワード(鍵)はなぜ人に渡してはいけないのかを、やさしく説明します。

※「サインイン」「パスワード」などの言葉は、記事の中でひとつずつ、身近な例えにしながら説明します。


きっかけ:「作った作品が見れない!」

ある日、Scratchを開いたら、今まで作った作品が一覧に出てきませんでした。子どもは「消えちゃった!」とあわてていました。

でも、作品は消えていません。サインインしていなかっただけです。サインインし直すと、ちゃんと作品が戻ってきました。

ここで子どもが「サインインって何?」となったので、順番に説明していきます。


サインインってなに?──「自分だよ」と伝える手続き

サインインとは、ひとことで言うと「『これは自分です』とサービスに伝える手続き」です。

以前の記事で、作品は自分のパソコンの中ではなく、インターネットの向こうの「大きな倉庫(サーバー)」に預けられている、という話をしました。

サインインは、その倉庫の受付で「自分はこの人です」と名前(と、後で出てくる鍵)を伝えて、開けてもらう動作です。

  • サインイン=自分だと伝えて、預けたものを受け取れるようにすること
  • サインインしていない=まだ受付で名前を伝えていない状態(だから自分の作品が出てこない)

💡 アカウントとサインインの関係

アカウント=「自分」という登録そのもの。サインイン=その自分として「今、入ります」と伝える動作。アカウントを作っただけでは作品は出てこず、サインインして初めて自分の作品が見られます。


サインインすると作品が見られる理由

ここがいちばん大事なところです。

作品は、世界中の人の作品といっしょに、インターネットの向こうの大きな倉庫に預けられています。倉庫には、たくさんの人の作品が入っています。

その中から「あなたの作品」だけを取り出すために、サインインで「自分はこの人です」と伝えます。すると、Scratchが「この人の作品はこちらです」と、倉庫(サーバー)からあなたのぶんだけを探して、一覧で表示してくれます(作品そのものがパソコンに移ってくるわけではなく、倉庫にあるものを見せてくれるイメージです)。

  • どのパソコンからでも、サインインすれば自分の作品が出てくる(作品はパソコンの中ではなく倉庫にあるから)
  • 逆に、サインインしないと「だれの作品を出せばいいか分からない」ので、出てこない

「別のパソコンなのに作品があった」のも、「サインインしないと見れない」のも、同じしくみだったのです。


パスワードは「鍵」──家の鍵と同じ

サインインには、ふつう「名前(ユーザー名)」と「パスワード」の2つを使います。

わが家で「パスワードって何かわかる?」と聞いたら、6歳は即座にこう答えました。

「鍵でしょ」

そのとおりです。パスワード=自分の倉庫を開ける「鍵」。名前(だれの倉庫か)と鍵(本当に本人か)の2つがそろって、はじめて中の作品を取り出せます。

さらに子どもは、「家の鍵とは違うの?」と聞いてきました。答えは——役割は家の鍵と同じです。

  • 家の鍵:自分の家を開ける。人に渡さない
  • パスワード(鍵):自分の倉庫を開ける。人に教えない

「家の鍵を知らない人に渡さないよね? パスワードも同じだよ」と話すと、子どもにもすっと伝わりました。家の鍵を家族以外に勝手に配らないのと同じで、パスワードも、なかよしの友達にも教えません

💡 ユーザー名は見えてOK、パスワードはダメ

ユーザー名(どの倉庫か)は人に見えても大丈夫。でもパスワード(鍵)は、自分と、管理する保護者だけの秘密です。


サインアウトすると見えなくなるのはなぜ?

サインインの反対が「サインアウト」です。これは「受付に『もう終わりました』と伝えて、鍵をしまう」イメージ。サインアウトすると、また名前と鍵を伝えない限り、作品は出てきません。

最初に「作品が見れない!」となったのは、サインアウトした状態(または最初からサインインしていない状態)だったからです。こわれたわけでも、消えたわけでもありません。

💡 よその・みんなが使うパソコンでは「サインアウト」

図書館や学校など、自分以外も使うパソコンでは、終わったらサインアウトするのが大切。鍵を開けっぱなしにして帰らないのと同じです。


親子で話しておきたいこと

サインインのしくみがわかると、安全な使い方も見えてきます。低学年のうちは、次のことを親子で確認しておくと安心です。

  • パスワード(鍵)は人に教えない:自分と、管理する保護者だけのもの
  • パスワードは保護者が管理する:低学年のうちは保護者が控えておく
  • みんなのパソコンではサインアウト:使い終わったら入口を閉める

まとめ

  • サインイン=「これは自分です」と伝えて、預けた作品を受け取れるようにする手続き(ログインとも言う)
  • 作品はパソコンの中ではなく“倉庫”にあるので、サインインして「自分」と伝えると、自分のぶんだけが出てくる
  • パスワード=自分の倉庫を開ける「」。家の鍵と役割は同じで、人に渡さない(教えない)
  • ユーザー名は見えてOK、パスワードは秘密。みんなのパソコンでは使い終わったらサインアウト
  • 「作品が見れない」は、こわれたのではなく、たいていサインインしていないだけ

子どもの「なんで?」は、ITのしくみをやさしく学ぶ入り口です。「サインイン」も、「鍵」という身近な例えにすれば6歳にも伝わりました。お子さんが「作品が見れない!」とあわてたときは、まずサインインを確認して、この記事を思い出してもらえたらうれしいです。

この記事は、「子どもの疑問から学ぶ ITのしくみ」シリーズの1本です。子どもがぶつかる『なんで?』を、体験が生まれるたびに、ひとつずつやさしく解説していきます。ほかの「なんで?」は、下の関連記事からどうぞ。

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